AIによって生成されたコンテンツの所有権および生成AIアプリケーションの利用規約

人工知能（AI）によって人間と機械の創造性の境界があいまいになり、コンテンツを生み出す能力も向上し続けるなか、所有権や知的財産権のあり方を巡って大きな問題が生じています。

英国の現状 – AIによって生成されるコンテンツの所有権

「英国著作権・意匠・特許法（CDPA　1988）」の下では、文学、演劇、音楽または芸術（LDMA）作品の著作権は「人間の著作者が所有する」というのが基本的な見解です。具体例として、コンピュータによって生成された芸術作品¹の場合、著作者は「作品の創作に必要な準備を実行した」者となります。英国法ではこれらの「コンピュータが生成した作品」に対し、生成時点から50年という短い期間での著作権を認めています（人間が作成したコンテンツの場合は著作者の死後70年間存続します）。

AIで生成されたコンテンツにおける「人間の著作者」とは、以下のいずれにも該当する可能性があるため、特定するのが難しい場合があります。

・ソフトウェアにプロンプトを入力する生成AIツールのユーザー

・生成AIソフトウェアの開発者

・生成AIソフトウェアに学習させた者

・生成AIソフトウェアの学習およびコンテンツ生成に使用される資料の著作権者

もうひとつ障壁となるのは、CDPAが著作権保護の対象となるLDMA作品（文学・演劇・音楽・芸術）にオリジナル性を求めている点です。生成AIツールのWEB上のトラフィック全体の82.5％を占めるChatGPTの場合²、学習に使用されるソースはインターネット上の公開情報やユーザーが入力したものです³。従って、生成された作品の構成要素が第三者の著作物として保護されている可能性もあるのです。

歴史的には「独創性」の基準はかなり低く、単に「複製されていないこと」と解釈されてきました。しかし、最近の判例法⁴において「著作者自身の知的創作」が必要であることが認められました。「創作」の要素が取り入れられることで「独創性」の基準は高くなります。「著作者」とは創作の技術や労力を提供する者を指し、ソフトウェア作成者がこれに該当することは明白ですが、作品においてアイデアから表現を生み出した者も該当する可能性があります。

生成AIアプリケーションの利用規約による影響

大半のAIツールには、生成されたコンテンツの所有権について定めた利用規約があります。アウトプットの所有権の保持をユーザーに認めている規約もあれば、ユーザーの権利を制限する規約もあります。

例えばMidJourneyなどは、有料会員には生成コンテンツの所有権を認めています5。無料会員の場合、コンテンツを他のユーザーが再利用したり共有したりする可能性があるため、独占的な所有権を持つことはできません。逆に、OpenAIが提供するChatGPTでは、ユーザーが生成したコンテンツの権利はユーザーにあると記載されています。ただし、モデルの改善や研究開発、ポリシーの法令順守のためにOpenAIが権利を持つ点に注意が必要です。

英国における今後の状況予測

英国にはAIに特化した規則や生成AIツールを規制する法律がないため、既存の法的枠組みの中で規制されています。

英国政府および英国知的財産庁（UKIPO）は「AI技術の権利を巡る国内外のガバナンスを強化する」という目的の下、公開協議を続けています。2022年の第1回協議のフィードバックでは、技術部門は「AIが生成したコンテンツの著作権はユーザーまたは開発者が所有すべき」と考えているのに対し、クリエイティブ業界は「当該コンテンツを著作権保護から除外してほしい」と考えていることが示されました。これは2023年のAI規制白書にも盛り込まれ、政府のイノベーション推進およびAI規制に対する原則主義が示されています。政府はまだ具体策を講じておらず、さらなる協議を推奨しているため、今後の展開は不透明な状況です。

結論

「AIが生成したコンテンツの最終的な所有権を誰が持つべきか」について、最後に重要な視点としてChatGPTに見解を求めたところ、以下のような回答が得られました。

「所有権は、最終的にはユーザーの貢献、技術の役割、社会的利益のバランスを反映した上で付与すべきです。そうすればイノベーションや責任あるAIの利用を促進しつつ、公平性を保つことができます。 政府や規制当局は生成AIのコンテンツに関して、より明確な法律を制定し、著作権や所有権のあいまいな点に対処する必要があります。」

この問題提起は有益なものですが、解決策が示されているわけではありません。最終的には政策や法律を立案する“人間”が知恵を絞る必要がありそうです。


[1] Section 9(3) of the Copyright Designs & Patents Act 1988

[2] https://www.aa.com.tr/en/science-technology/openai-s-chatgpt-boasts-highest-visits-among-world-s-most-popular-ai-tools/3363105#:~:text=The%20highest%2Dranking%20tool%20is,million%20website%20visits%20in%20March

[3] https://help.openai.com/en/articles/7842364-how-chatgpt-and-our-foundation-models-are-developed

[4] THJ Systems Ltd v Sheridan [2023]EWCA Civ 1354

[5] https://docs.midjourney.com/docs/terms-of-service