2021年の英国EU離脱は、商標の登録件数や保護のあり方などに大きな影響を与えました。ここでは商標権者が直面している課題を整理し、今後の商標戦略についてご紹介します。
2021年、英国商標の登録数は倍増しました(詳しくはこちら)。その結果、商標登録するブランドの選択やクリアランス調査、モニタリング、異議申立などが困難になるなど、新たな課題が生じています。
EU離脱後の英国商標の登録簿は、EU商標のものと連動しつつも切り離されたものとなっています。それぞれの商標における保護手続きには異なる点もあり、それは出願戦略にも影響します。そのため、商標権者やその代理人は、この違いを理解しておくことが重要です。
代理人に関するUKIPOの制度改定
代理人に関して、UKIPOではいくつかの制度が改定されました。そのひとつが、国外の企業や団体が英国商標に関する手続きや請求を行う際は、英国内に拠点を置き、かつUKIPOに登録された代理人を立てなければならない、という規定です。これは2024年1月1日までに義務化される予定です。直前にあわてて代理人を探すことのないよう、今のうちに英国拠点の代理人を指定しておくことをおすすめします。そのことは、ポートフォリオ管理の改善や、UKIPOからの公式な通知をより確実に、より早く受け取ることにもつながります。
また、マドリッド・プロトコルに基づき英国を指定国とする場合の、代理人の実務に関する改定も最近発表されました(詳しくはこちら)。この件を考慮しても、英国における代理人の指定は、喫緊の課題といえるでしょう。
異議申立および紛争
EUIPOとUKIPOの手続きは類似しつつも、いくつかの重要な違いがあります。特に異議申立に関する相違点には注意が必要です(主な相違点はこちら)。EUIPOとUKIPOのどちらを選択するか、また双方での異議申立をどのように連動させるか、商標権者にとって新たな悩みの種といえるでしょう。(異議申立を同時に進めるには)
英国の異議申立手続きは訴訟に似ています。そのため専門家のしっかりとしたサポートが不可欠です(英国における異議申立)。EUの異議申立は、事務的な側面の強い手続きですが、こちらも専門家のサポートは欠かせません(EUにおける異議申立)。多くの異議申立は和解によって決着するため、和解交渉の経験値が異議申立の成否を大きく左右します(和解交渉に関して詳しくはこちら)。
ポートフォリオの管理
大半の商標権者は英国とEU、それぞれの商標を同時並行で管理しています。このような場合、特許権者は毎年さまざまな決断を下す必要に迫られますが、適切な戦略と事前の計画があれば心配ありません。ポートフォリオ管理についてお困りのことがありましたら、ぜひ弊所へご相談ください。